ビジネス職でもAIワークフロー開発者になれる:3ヶ月250人企業での伴走支援実践記録

田中 慎

田中 慎

CEO / PM / Vibe Coder

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ビジネス職でもAIワークフロー開発者になれる:3ヶ月250人企業での伴走支援実践記録

はじめに

「AIツールを導入したが、社内で使いこなせる人が限られている」
「研修を実施しても、実務での活用につながらない」
「開発を外注しても、内製化が進まず依存体質になってしまう」

こうした課題を抱える企業は少なくありません。

私たちAI Nativeは、社員250人以上の企業で、マーケティング、カスタマーサポート、事業内部オペレーションの3セクションにわたって、3ヶ月間のAI業務効率化支援を行ってきました。

その中で、ビジネス職(GitHub・Cursor未経験者)でも1〜2ヶ月で自走できるAIワークフロー開発者になれるという確信を得ました。

この記事では、従来の研修型・納品型アプローチがなぜうまくいかないのか、そして私たちが実践している「伴走型支援」の具体的な方法と成果をお伝えします。


支援の概要

対象セクションと範囲

今回の支援では、以下の3セクションでAI業務効率化を推進しました:

  1. マーケティング部門
    • SEO施策の効率化
    • コンテンツ作成の自動化・支援
    • 記事生成ワークフローの構築
    • キーワード分析の自動化
  2. カスタマーサポート部門
    • 問い合わせ対応の効率化
    • FAQ生成・更新の自動化
  3. 事業内部オペレーション
    • 社内業務プロセスの効率化
    • データ処理・集計の自動化

参加メンバー構成

  • まずはマーケティングセクション3名、AI推進チーム1名が定例ミーティングに参加
  • GitHub・Cursor・Difyなどのツール使用経験なし

支援期間

  • 3ヶ月間(現在進行中)
  • 週次1時間の定例ミーティング
  • 随時のSlackサポート

従来の支援アプローチの課題

AI業務効率化支援には、大きく分けて2つのアプローチがあります。しかし、これらの従来型アプローチには限界があることがわかってきました。

パターンA:「研修型」の限界

アプローチ:

  • AIツールの使い方を座学で教える
  • デモを見せてハンズオン形式で実践
  • 研修後は各自で活用してもらう

なぜうまくいかないのか:

  1. 実務とのギャップ
    • 研修で学んだ内容と実務でのニーズが一致しない
    • 「使えそう」と思っても、実際の業務フローに組み込めない
  2. モチベーションの低下
    • 自分の業務に直結しないため、学習意欲が続かない
    • 研修後に実践しないまま忘れてしまう
  3. インプットが進まない
    • 一度の研修だけでは定着しない
    • 継続的な学習環境がない

パターンB:「納品型」の限界

アプローチ:

  • ヒアリングして要件定義
  • 開発チームがワークフローを開発
  • 完成したものを納品・運用

なぜうまくいかないのか:

  1. ブラックボックス化
    • どうやって動いているのか理解できない
    • 少しの修正も開発チームに依頼が必要
  2. 内製化につながらない
    • 新しいニーズが出てきても自分たちで対応できない
    • 永続的に外部依存の体質になる
  3. 改善サイクルが回らない
    • 修正・改善のたびにコストと時間がかかる
    • 業務の変化に柔軟に対応できない

実践した「伴走型支援」の方法

これらの課題を解決するために、私たちは「伴走型支援」というアプローチを採用しました。

週次定例の設計

頻度: 毎週1時間

参加者: マーケティングセクション3名 + AI推進チーム1名 + AI Native担当者

初回ミーティングの流れ:

  1. 現状の業務フローヒアリング
    • どのような業務を行っているか
    • 現在どのような課題があるか
    • どの部分が時間を取られているか
  2. 業務プロセスの課題抽出
    • ボトルネックの特定
    • 自動化できそうな部分の洗い出し
    • 効率化の優先順位づけ
  3. 要求定義の作成
    • どのようなワークフローを作りたいか
    • どのような結果を期待するか
    • 使用するツールの選定

段階的なレクチャー方法

ステップ1:既存ワークフローの紹介

既に開発したことがあるようなワークフローの場合:

  • そのワークフローを見せながらレクチャー
    • どのように構成されているか
    • 各ステップで何をしているか
    • なぜこのような設計にしたのか
  • 画面共有で実際の動作を確認
    • 入力から出力までの流れ
    • パラメータの意味と調整方法
    • エラーハンドリングの方法

ステップ2:実践的な開発レクチャー

新規のワークフローが必要な場合:

  • まず私が開発してからレクチャー
    • 要件を満たすワークフローを実装
    • なぜこの設計にしたのか説明
    • 代替案との比較
  • ペアプログラミング的アプローチ
    • 画面を共有しながら、一緒に考える
    • やり方だけでなく、修正方法も教える
    • Cursor、Dify、各種APIの使い方を実践的に伝える

ステップ3:自分で作ってみる

実践サイクル:

  1. ワークフローの作り方をレクチャー
    • 基本的な構成パターン
    • よく使うノードやAPIの使い方
    • デバッグの方法
  2. 参加者が自分の業務でワークフロー作成
    • 自分のタスクに対してワークフローを設計
    • 実際に実装してみる
    • 動作確認と調整
  3. 詰まったところをフィードバック
    • 週次定例でつまずいたポイントを共有
    • 一緒に解決策を考える
    • より良い実装方法を提案
  4. 改善・新規タスクへの展開
    • 既存ワークフローの改善
    • 新しいタスクへのワークフロー適用
    • セクション内での知見共有

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成功要因の分析

なぜこの「伴走型支援」がうまくいっているのか、3つの成功要因を分析しました。

1. モチベーション設計:自分の業務効率化につながる

単純な研修との違い:

従来の研修では、「AIツールの使い方」を教えるだけで終わってしまいます。しかし、伴走型支援では:

  • 自分の実際の業務がテーマ
  • 自分の課題を解決するためのワークフロー開発
  • 自分の成果が目に見えて向上

これにより、学びと実務が完全に連動します。

「自分の業務が楽になる」という明確なモチベーションがあるため、主体的に学び続けることができます。

実際、参加者の声として:

「研修だと『勉強しなきゃ』という義務感だったが、今回は『これで残業が減る!』というワクワク感がある」

「自分の業務で使えるものを作っているので、学んだことがすぐに役立つ実感がある」

といったフィードバックをいただいています。

2. 継続的な実践環境:毎週必ず使う仕組み

全員が毎週、何らかのAIツールを使ってオペレーションを作る

これが、インプットを確実に進める最大のポイントです。

  • Cursor:コード生成・修正
  • Dify:ワークフロー構築
  • 各種API:Google Sheets、Slack、外部サービス連携

週次定例では、「前回から今回までに何を作ったか」を共有します。これにより:

  1. 強制的にインプットする機会が毎週ある
  2. 知識が毎週アップデートされる
  3. 他のメンバーの取り組みからも学べる

実際、3ヶ月間で参加者全員が:

  • 少なくとも3〜5個のワークフローを自力で開発
  • APIを使った外部連携を実装
  • Cursorを使ったコード修正・デバッグができる

レベルまで到達しています。

3. セクション単位での成長:参加者全員がレベルアップ

マーケティングセクション3名とAI推進チーム1名が参加することで、以下のような好循環が生まれました:

相互学習効果:

  • 他のメンバーの成功事例を見て刺激を受ける
  • つまずいたポイントを共有し合う
  • より良い実装方法をディスカッションする

セクション内での知見蓄積:

  • そのセクション特有のワークフローパターンが確立
  • 新しいメンバーにも教えられるようになる
  • セクション全体でAI活用のレベルが底上げ

結果として:

各セクションで、かなりレベルの高いAIワークフローを開発できるようになってきました。

例えば:

  • マーケティング部門では、記事生成→SEOチェック→公開までの一連のフローを自動化
  • カスタマーサポートでは、問い合わせ内容の分類→回答案生成→ナレッジベース更新を実装
  • オペレーション部門では、複数のGoogle Sheetsをまたいだデータ集計・レポート生成を自動化

具体的な成果

開発能力の獲得:1〜2ヶ月で自走レベルに

参加者の属性:

  • 全員ビジネス職(営業、マーケ、カスタマーサクセスなど)
  • GitHub未経験
  • Cursor未経験
  • Dify未経験
  • プログラミング経験なし(または限定的)

1ヶ月後:

  • Cursorを使った簡単なコード生成・修正ができる
  • Difyで基本的なワークフローを構築できる
  • 既存ワークフローの改善ができる

2ヶ月後:

  • 自分のタスクに対して、新規でワークフローを設計・実装できる
  • APIを使った外部サービス連携ができる
  • エラーが出たときに自力でデバッグできる

3ヶ月後(現在):

  • セクション内でかなり高度なワークフローを開発できる
  • 他のメンバーにレクチャーできるレベル
  • 新しいツールやAPIも自力で調査・導入できる

活用ツールの広がり

参加者が実際に使いこなしているツール:

AI開発環境:

  • Cursor:コード生成、デバッグ、リファクタリング
  • Claude / ChatGPT:プロンプト設計、要件整理

ワークフロー構築:

  • Dify:ノーコード/ローコードワークフロー
  • n8n / Zapier:サービス間連携
  • Google Apps Script:DifyとのAPI連携によるスプレッドシートのデータ書き換え/データ追加など

API連携:

  • Google Sheets API:データ管理
  • Slack API:通知・コミュニケーション
  • 各種外部API:業務に応じて

開発レベル:高度なワークフローの実現

現在、各セクションで開発されているワークフローの例:

マーケティング部門:

キーワード分析 → 記事構成案生成 → ライティング支援 → SEOチェック → 画像生成 → 公開前レビュー → CMS投稿

カスタマーサポート部門:

問い合わせ受信 → 内容分類 → 過去事例検索 → 回答案生成 → 担当者レビュー → 回答送信 → ナレッジベース更新

オペレーション部門:

複数シートからデータ抽出 → データクレンジング → 集計・分析 → レポート生成 → Slack通知 → 定期実行

これらすべてを、ビジネス職のメンバーが自力で設計・実装・運用しています。


今後の展望

この企業での展開:数千万円のインパクトへ

現在進行中のこの企業では、以下の目標を設定しています:

工数削減インパクト:

  • 3セクション × 複数ワークフロー
  • 各ワークフローで月間数十〜数百時間の削減
  • 合計で工数ベースで数千万円後半のインパクトを目標

自動化された業務プロセス:

  • 定型業務の大部分を自動化
  • 社員はより創造的な業務に集中
  • 生産性の大幅な向上

AI BPO新規事業への発展

この取り組みで得られた知見を活かし、次のステップに進みます:

AI BPOの提案:

  1. 内製化した業務プロセスを外販
    • 自社で効率化した業務フローを他社にも提供
    • AI Native主導でBPO事業として展開
  2. 1年以内に数億円のインパクト
    • この企業での成功モデルを横展開
    • 複数のクライアントでAI BPO事業を立ち上げ
  3. 新しいビジネスモデルの確立
    • 単なるコスト削減ではなく、新しい収益源の創出
    • AI活用で可能になる新しいサービスの開発

詳しくは、AI BPOのページをご覧ください。

横展開:数十社レベルでの展開

このモデルの有効性が証明されたことで、今後は:

展開計画:

  • 数十社レベルでの同様の支援を展開
  • 各社で内製化 → AI BPO事業化の流れを構築
  • 業界・規模に応じたカスタマイズ

目指す姿:

  • 各社がAIを使いこなせる組織に変革
  • 内製化によるコスト削減と柔軟性の向上
  • AI BPOによる新しい収益機会の創出

まとめ:伴走型支援の3つのポイント

3ヶ月間の実践を通じて、AI内製化を成功させるためのポイントが見えてきました。

1. 自分の業務と直結させる

単純な研修ではなく、実務と連動させる

  • 参加者自身の業務課題をテーマにする
  • 学んだことがすぐに業務に活かせる
  • モチベーションが継続する

2. 毎週必ず使う仕組みを作る

継続的な実践環境が最重要

  • 週次定例で必ず何かを作る
  • インプットが確実に進む
  • 知識が毎週アップデートされる

3. 開発して終わりではなく、一緒に作る

伴走型のサポート体制

  • 画面共有でペアプログラミング的にレクチャー
  • 詰まったところを一緒に解決
  • 自走できるレベルまで並走する

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AI Nativeの支援サービス

AI Nativeでは、今回ご紹介した「伴走型支援」を含む、包括的なAI活用支援サービスを提供しています。

CAIO(Chief AI Officer)サービス

経営層向けに、AI戦略の立案から実行までを支援します。

  • AI活用戦略の策定
  • 組織体制の構築支援
  • 内製化ロードマップの作成

詳しくは、CAIOサービスのページをご覧ください。

AI業務効率化支援・AI研修

今回ご紹介した伴走型支援を、貴社でも実施できます。

  • 週次定例による継続的なサポート
  • ワークフロー開発のレクチャー
  • 内製化に向けた能力育成
  • ChatGPT、Dify、AI駆動開発の実践研修

詳しくは、AI研修・人材育成サービスのページをご覧ください。

コンテンツの自動化については、こちらのブログもご確認ください:

AI BPO事業開発支援

内製化した業務プロセスを、新しい収益源に変えます。

  • AI BPO事業の立ち上げ支援
  • 業務プロセスの外販化
  • 新しいビジネスモデルの構築

詳しくは、AI BPOのページをご覧ください。


お問い合わせ

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執筆者

田中 慎

田中 慎

CEO / PM / Vibe Coder

2011年新卒で受託開発/自社メディア企業にWebデザイナーとして入社。1年半ほど受託案件のディレクション/デザイン/開発に従事。2012年株式会社サイバーエージェントに転職し、約4年間エンジニアとしてポイントプラットフォーム事業、2つのコミュニティ事業の立ち上げ・運用に従事。同時に個人事業主としてWebサービス/メディアの開発をスタートし、年間3,000万円以上の利益を創出。2017年株式会社overflowを共同創業者・代表取締役CPOとして設立。2つのHR SaaS事業をゼロから立ち上げ、累計1,000社以上の企業、エンジニア/PMなど3万人以上が利用するサービスへと成長させた。現在はAI Nativeの創業者として、AIと人間の共創による新しい価値創造を推進。