AI研修を実施しても業務にインパクトが出ない本当の理由

田中 慎

田中 慎

CEO / PM / Vibe Coder

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AI研修を実施しても業務にインパクトが出ない本当の理由

こんにちは。AI Native の田中です。今回は、AI研修・生成AI研修を検討している、あるいはすでに実施した企業の皆さんに向けて、少し警鐘を鳴らすような内容をお伝えします。

最近、多くの会社でAI研修を導入するケースが増えています。「生成AI研修 おすすめ」「AI研修 費用」といったキーワードで検索し、研修サービスを比較検討している方も多いでしょう。

しかし、AI研修を実施したからといって、その後のAI推進が進み、業務効率化やコア事業へのインパクトが出た——という話は、実際にはそこまで多くありません。

私たちが企業のAI推進をご支援する中で、研修後に「結局使われていない」「期待した効果が出ていない」という声を数多く聞いてきました。なぜこのようなことが起きるのか、そして本質的なAI推進には何が必要なのか——この記事で整理していきます。

なぜAI研修後にAI推進が進まないのか

業務から逆算した設計になっていない - AI研修の問題点

AI研修を実施したにもかかわらず、その後のAI活用が進まない。この問題の背景には、いくつかの構造的な要因があります。

助成金・補助金を意識した研修の限界

AI研修を検討する際、多くの企業が助成金や補助金の活用を視野に入れます。AI事業者が厚生労働省の助成金対象になっているケースも増えています(東京都)。しかし、助成金対象の研修には「内容を画一化しなければならない」という制約があるケースがあります。

参考: https://jsite.mhlw.go.jp/saga-roudoukyoku/content/contents/001507188.pdf

その結果、事業部ごと、チームごとに最適化された研修内容にできない。営業部門と開発部門では求められるAI活用スキルが異なるにもかかわらず、同じカリキュラムを受けることになる。これでは、研修で学んだことが実務に直結しにくくなります。

業務から逆算した設計になっていない

多くのAI研修は、「AIツールの使い方を教える」ことに重点が置かれています。ChatGPTの基本操作、プロンプトの書き方、生成AIの仕組み——これらは確かに重要な知識です。

しかし、「自社の業務でどう活用するか」という観点が欠けていると、研修は単なる知識習得で終わってしまいます。

本来であれば、「この業務のこの工程でAIを使うと、こういう効果が出る」という業務から逆算した設計が必要です。それがなければ、研修を受けた社員は「面白かったけど、明日から何に使えばいいか分からない」という状態になります。

よくあるAI研修の落とし穴

AI研修でありがちな問題点を、もう少し具体的に見ていきましょう。

「ミニアプリを作ってみましょう」の罠

最近のAI研修では、CursorやClaude CodeなどのAIツールを使って「実際に何か作ってみましょう」というハンズオン形式が人気です。参加者がミニアプリを作成し、「AIでこんなことができるんだ!」と実感できる——一見、効果的な研修に見えます。

しかし、手段が目的化されていると、研修で作ったミニアプリが、その後業務で使われることはあまりないでしょう。

なぜか。実際の業務システムには、保守運用の問題があります。社内のデータベースとの連携が必要になります。情報セキュリティの審査を通す必要があります。研修で作った「動くもの」と、実務で使える「システム」の間には、大きな溝があるのです。

研修で学んだことが実務に活きない

CursorやClaude Codeを使えるようになること自体は、ポジティブなことです。ドキュメント作成や簡単な開発ができるようになるのは、スキルアップとして価値があります。

しかし、「コア事業にインパクトを出す」という観点では、画一的な研修だけでは不十分です。

AIを使って業務プロセスを変革し、売上や利益に貢献するレベルまで持っていくには、もっと深く入り込んだサポートが必要になります。研修はあくまで入口であり、その先の実装・運用まで見据えた設計がなければ、投資対効果は限定的です。

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本質的なAI推進に必要なこと

では、本当に業務にインパクトを出すAI推進には、何が必要なのでしょうか。

業務から逆算したワークフロー設計

まず必要なのは、業務から逆算したAI活用ワークフローの設計です。

「このツールが便利だから使ってみよう」ではなく、「この業務課題を解決するために、AIをこう組み込む」という発想が重要です。現場の業務フローを理解し、どこにAIを入れると効果が最大化されるかを見極める。この設計がなければ、どんなに良いツールを導入しても、使われないまま終わります。

📘 関連記事: 業務へのAI組み込みについては、AIワークフロー完全ガイドで詳しく解説しています。

上流工程からの関与

AI Nativeでは、研修だけを単体で実施するのではなく、AI開発・コンサルティング・プロダクトマネジメント・プロジェクトマネジメントの上流段階から入らせていただくことを重視しています。

なぜこのプロジェクトをやるべきなのか。どの業務にAIを適用すると効果が出るのか。どういう順序で進めるべきか。これらを整理した上で、必要に応じてチーム・事業部ごとに最適化した研修・教育を実施する。この順序が重要です。

研修が先にあるのではなく、戦略と設計が先にあり、その実行手段の一つとして研修がある——この考え方です。

チーム・事業部ごとの個別最適化

全社一律の研修ではなく、チームや事業部の業務内容に合わせた個別最適化が効果を最大化します。

営業部門であれば、提案資料作成や顧客対応での活用。マーケティング部門であれば、コンテンツ制作やデータ分析での活用。開発部門であれば、コード生成やドキュメント作成での活用。それぞれに適したカリキュラムと、実際の業務で使えるワークフローを一緒に作っていく必要があります。

もちろん、個別最適だけでなく全体最適なワークフローを構築することも可能です。まず全社共通で使えるベースのワークフローを作り、それを各チームに横展開する。その上で、チームごとのドメイン知識やユースケースに合わせてプロンプトをチューニングしていく——このアプローチであれば、個別最適と全体最適を両立できます。

AI研修を検討する際のポイント

これからAI研修・生成AI研修を検討する企業の皆さんに、いくつかのポイントをお伝えします。

助成金目当てで安易に決めない

「助成金で費用が戻ってくるから、とりあえず実施してみよう」——この考え方は危険です。

確かに、助成金を活用すれば研修費用は抑えられます。しかし、かけた時間に対して得られる効果が低ければ、トータルで見ればマイナスです。社員の時間も、企業にとっては重要なリソースです。効果が出ない研修に時間を使うことは、機会損失につながります。

業務プロセスへのインパクトを整理する

研修を検討する前に、「研修後に社員がAIを使いこなすことで、業務プロセスにどれくらいのインパクトが出せるか」を整理してください。

この整理ができていないと、研修の効果測定もできません。「良い研修だった」という感想で終わってしまい、実際の業務改善につながったかどうかが分からないままになります。

AI研修でのオンライン・eラーニングの活用

AI研修の形式として、オンライン研修やeラーニングも有効な選択肢です。特に、基礎的な知識習得の部分はeラーニングで効率化し、実践的なワークショップは対面やオンラインライブで行う——このハイブリッドな形式が効果的です。

ただし、eラーニングだけで完結させようとすると、「コンテンツを見て終わり」になりがちです。学んだことを実務で試す機会と、フィードバックを受ける仕組みがセットで必要です。

AI Nativeのアプローチ

最後に、AI Nativeとしてのアプローチをお伝えします。

開発・コンサルティング支援に研修を含めるので実質無料で研修も

AI Nativeでは、AI開発やコンサルティングのご支援に入らせていただく企業様に対して、生成AI研修を追加費用なしで提供しています。

これは、研修だけを切り離して実施しても効果が限定的だという考えに基づいています。開発・コンサルティングの文脈の中で、必要なタイミングで必要なスキルを身につけていただく——この形が最も効果的だと考えています。

eラーニングコンテンツの提供

また、ご支援に入らせていただいている企業様向けに、これまでの知見をeラーニング化して提供することも検討しています。クライアント様のニーズに応じたカリキュラムを作成し、いつでも学べる環境を整備していく予定です。

研修単体でのご依頼も可能

開発・コンサルティングではなく、研修単体でのご依頼も承っています。その場合も、単なる知識習得ではなく、貴社の業務に合わせた実践的な内容にカスタマイズすることを重視しています。

⚠️ 関連記事: AI活用が進まない組織の問題については、AIを使わない会社・経営者は淘汰されるも合わせてご覧ください。

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まとめ:研修の先にある「本質的なAI推進」を見据えて

AI研修・生成AI研修は、AI推進の入口として有効な手段です。しかし、研修を実施しただけでは、業務へのインパクトは限定的です。

本質的なAI推進のためには:

  • 業務から逆算したワークフロー設計
  • 上流工程(戦略・設計)からの関与
  • チーム・事業部ごとの個別最適化
  • 研修後の実践機会とフィードバック

これらがセットで必要です。

「AI研修 おすすめ」「生成AI研修 費用」といったキーワードで検索している方は、ぜひ一度立ち止まって考えてみてください。その研修は、本当に貴社の業務にインパクトを出せるものですか?

研修の先にある「本質的なAI推進」を見据えた選択をしていただければと思います。


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AI Nativeでは、AI開発・コンサルティングから研修まで、一貫したAI推進支援を行っています。「研修だけでなく、業務へのインパクトまで見据えた支援を受けたい」「自社に最適なAI活用を一緒に考えてほしい」という方は、無料相談をご利用ください。

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執筆者

田中 慎

田中 慎

CEO / PM / Vibe Coder

2011年新卒で受託開発/自社メディア企業にWebデザイナーとして入社。1年半ほど受託案件のディレクション/デザイン/開発に従事。2012年株式会社サイバーエージェントに転職し、約4年間エンジニアとしてポイントプラットフォーム事業、2つのコミュニティ事業の立ち上げ・運用に従事。同時に個人事業主としてWebサービス/メディアの開発をスタートし、年間3,000万円以上の利益を創出。2017年株式会社overflowを共同創業者・代表取締役CPOとして設立。2つのHR SaaS事業をゼロから立ち上げ、累計1,000社以上の企業、エンジニア/PMなど3万人以上が利用するサービスへと成長させた。現在はAI Nativeの創業者として、AIと人間の共創による新しい価値創造を推進。