3ヶ月AIネイティブ経営にディープダイブして見えた「社長AI」の可能性

田中 慎

田中 慎

CEO / PM / Vibe Coder

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3ヶ月AIネイティブ経営にディープダイブして見えた「社長AI」の可能性

こんにちは、AI Nativeの田中です。

この3ヶ月間、AIネイティブな経営にどっぷり浸かってきました。その中で見えてきたこと、作り上げたプロダクト、そしてこれからの展望について、率直にお話ししたいと思います。

はじめに - 3ヶ月のAIネイティブ経営への没頭

社長AI ナレッジベース事例

まず前提として、この3ヶ月で「AIマネジメント」というリポジトリを立ち上げ、社長AIというプロダクトのLPをリリースしました。

これは単なるツールではありません。1つのリポジトリに、事業・営業・マーケ・財務・会計・本部等のすべてのデータをドキュメントとして整理し、毎回AIに入れるようにしているという仕組みです。

💡 ポイント:事業計画から予実管理、行動のKPIまで、すべてが一元管理されています。そこから逆算したデイリーのタスクやレポートが、コミットと連動して自動生成される仕組みを構築しました。

社長AIとは何か

全社データを一元管理するリポジトリ

社長AIの核となるのは、すべての経営データを構造化してストックする仕組みです。

具体的には:

  • 事業データ:各事業の進捗、KPI、課題
  • 営業データ:パイプライン、商談状況、受注予測
  • マーケティングデータ:リード獲得、CV率、チャネル分析
  • 財務・会計データ:予実管理、キャッシュフロー、損益
  • 本部データ:人事、総務、法務の状況

これらをすべてドキュメント化し、AIが理解できる形で整理しています。毎回のやり取りでこのコンテキストを持たせることで、経営の全体像を把握したAIとの対話が可能になります。

全社データを一元管理する経営リポジトリの構築図
社長AIの中核:全社データを一元管理する経営リポジトリ

デイリータスク・レポートの自動生成

事業計画から逆算されたデイリーのタスクやレポートは、コミットをトリガーにして自動生成されます。

事業計画から逆算したタスクとレポートの自動生成
事業計画から逆算したタスクとレポートを自動生成

これを発展させれば:

  • Slackへの自動通知
  • 経営者向けの週次・月次レポート自動作成
  • KPI達成状況のリアルタイムアラート

といった運用も可能です。経営の意思決定の精度とスピードを上げるための情報のデリバリーが、「トリガーを設定して自動運用」という世界が、すでに手の届くところにあります。

経営オペレーションの自動化
経営のオペレーションは、ここまで自動化できる

なぜこのプロダクトを作ったのか - 8年の経営経験から

各セクションの課題が「数字」でしか見えない問題

8年間経営をしてきて、常に感じていた課題があります。

各セクションの状況が「数字」でしか見えづらいということです。

売上、利益、KPI——数字は見える。でも、その背景にある課題、現場の温度感、細かいコンテキストは、しっかり見に行って、細かく把握しに行かなければわからない

そして人が増えて中間管理職やリーダーに移譲していっても、彼らの成長や良い人材の採用ができなければ、課題を適切に報告する、課題に対して手段を考え実行する、適切に共有する、他セクションと連携する——こういったことがどんどんやりづらくなっていきます。

⚠️ 経営者の悩み:解像度の高いところ(現場の詳細)と、抽象度の高いところ(全体戦略)を行き来して、すべてのファンクションでやり切るのは、難易度が非常に高い。

経営者が直面する解像度の断絶
経営者は「抽象」と「具体」の両極を常に行き来しなければならない

🏢 マルチプロダクト時代の経営課題:ソフトウェア企業の多くが、今はマルチプロダクト・コンパウンドが当たり前になってきています。複数事業を同時にマネジメントし、それぞれの状況を正確に把握して意思決定していくことは、想像以上に難しい。社長AIは、そういった複数事業のマネジメントを支援するという文脈でも価値を発揮します。

意思決定の精度と速度を上げたい

経営における本質的な課題は、いかにしてマネジメントするか、意思決定の精度をいかに高めて、さらに早くするかということです。

🎯 経営者の本質的な役割:経営者は、経営戦略やMVVの実現のために本当に重要なことに集中すべきです。時には大きな方向性を定めるために、自ら1顧客に対して営業をすることもあります。抽象と具体を行き来しながら、戦略・意思決定の精度を継続的に向上させていく——これこそが経営者の仕事です。

社長AIは、この経営者の仕事を「代替」するものではありません。経営者がより重要な意思決定に集中できるよう、情報収集や整理の負担を軽減する「支援ツール」として位置づけています。

この課題を逆算して考えた結果、たどり着いたのが社長AIというプロダクトのあり方でした。

これは、パランティアの記事でも書いていますが、データを集約して意思決定を支えるというプロダクトの思想と共通しています。

構造化データのストック方法

クライアントワークからのナレッジ抽出

社長AIに入れているデータの中で特に価値があるのが、クライアントワークから抽出したナレッジです。

我々は様々な文脈で事業に関わっています:

  • 自社プロダクトの開発
  • クライアント向けのAI開発
  • AIコンサルティング案件

これらすべての案件から、各ファンクション(営業、マーケ、開発、CS等)でどんな課題があり、どういった解決策があるのかというナレッジを抽出し、ドキュメント化して蓄積しています。

📋 データガバナンスについて:クライアント企業の具体的な課題や解決策をそのまま蓄積するのではなく、抽象化・一般化したナレッジとして蓄積しています。各社固有の情報や機密事項は含まず、業界・ファンクション共通の課題パターンと解決アプローチとして整理することで、データガバナンスを担保しています。

来年以降のM&A事業への展開構想

この構造化されたナレッジベースは、来年以降、M&A事業に対しても提供していく予定です。

買収した企業の経営改善、PMIの支援など、データドリブンな経営支援の土台として活用できると考えています。

パランティアの思想との共通点

データを集約して意思決定を支える

パランティア・テクノロジーズの思想には、深く共感しています。

彼らが提供しているのは、単なるデータ分析ツールではありません。組織全体のデータを統合し、意思決定の基盤となるプラットフォームです。

社長AIも、まさに同じ思想で作っています。

日本市場でも必要なプロダクト

パランティア以外にも、こういったプロダクトが日本市場で確実に必要になってきています。

多くの企業でこうしたプロダクトが増えていくことが想定される中、なぜ私が自ら作っているのか。それは、我々独自の強みがあるからです。

我々の強み

強み 詳細
クライアントワーク経験 開発・コンサルティングで、あらゆるファンクションの課題と解決策を現場で見てきた
自社プロダクト開発経験 どのようにグロースすべきか、セールス・マーケティングの立ち振る舞い、リード獲得、商談の仕方、スライド作成まで実践
プロダクトマネジメント知見 プロダクト戦略、開発体制、技術選定のノウハウ

これらを土台にした上で、クライアントにどのようにデータをストックし、どのように課題を解決すべきかを、解像度高くサポートできる土台のデータとして社長AIを開発しています。

社長AIの今後

β版としてのPoCユーザー募集

社長AIをPoCとして使いたいという利用企業の皆さんを募集しています。

こちらのLPからお問い合わせください。

データストック → レポート → 可視化のサポート

まずは以下のスコープでサポートを提供します:

  1. データをストックする:全社データの構造化・一元管理
  2. レポートする:自動レポート生成、経営ダッシュボード
  3. 可視化する:意思決定に必要な情報の見える化
社長AI β版 PoCユーザー向けサポートスコープ
社長AI β版のサポートスコープ

それ以降のソリューション(実際の課題解決、実行支援)については、CAIO代行サービスAI BPOサービスとしてサポートしていきます。

プロダクトアウトではなく必然

AIネイティブな経営を進める中で、こういったプロダクトが出てくるということは、単純にプロダクトアウト的な視点ではなく、確実に必要になると感じて開発しています。

経営の現場で本当に使えるツールを、経営者自身が作る。これが我々のアプローチです。

一緒に開発してくれる仲間を募集

FDE的な人材像

FDE(Forward Deployed Engineer)の記事でも書いていますが、私たちが求めているのは、顧客対応ができて、そこから自社プロダクトや全体的なプラットフォームの改善ができる人材です。

具体的には:

  • クライアントワークでの開発・コンサルティング
  • 自社プロダクトの改善・機能追加
  • ナレッジの抽出とドキュメント化

これらを横断的にできる人材を探しています。

興味がある方は、ぜひ採用ページからご応募ください。

おわりに

3ヶ月間、AIネイティブ経営にディープダイブしてきて、確信したことがあります。

経営データを構造化し、AIに理解させ、意思決定を支援するプロダクトは、これからの経営に必須になる。

パランティアが政府・大企業向けに提供しているような仕組みを、中小企業やスタートアップでも使えるようにする。これが社長AIの目指すところです。

8年間の経営経験、クライアントワークで培ったナレッジ、そしてAIネイティブな開発手法。これらを組み合わせて、本当に使えるプロダクトを作っていきます。

社長AIに興味がある方へ

β版のPoCユーザー、一緒に開発してくれる仲間、どちらも募集しています。

AIDXを活用した経営に興味がある方は、ぜひ経営者のためのCAIO活用ガイドもご覧ください。

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執筆者

田中 慎

田中 慎

CEO / PM / Vibe Coder

2011年新卒で受託開発/自社メディア企業にWebデザイナーとして入社。1年半ほど受託案件のディレクション/デザイン/開発に従事。2012年株式会社サイバーエージェントに転職し、約4年間エンジニアとしてポイントプラットフォーム事業、2つのコミュニティ事業の立ち上げ・運用に従事。同時に個人事業主としてWebサービス/メディアの開発をスタートし、年間3,000万円以上の利益を創出。2017年株式会社overflowを共同創業者・代表取締役CPOとして設立。2つのHR SaaS事業をゼロから立ち上げ、累計1,000社以上の企業、エンジニア/PMなど3万人以上が利用するサービスへと成長させた。現在はAI Nativeの創業者として、AIと人間の共創による新しい価値創造を推進。