AIで"人を減らす"だけでは終わらない——業務効率化から新規事業・BPO展開へ広がるAI経営の可能性

田中 慎

田中 慎

CEO / PM / Vibe Coder

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AIで"人を減らす"だけでは終わらない——業務効率化から新規事業・BPO展開へ広がるAI経営の可能性

AI導入の話をすると、多くの経営者がまず思い浮かべるのは「業務効率化」です。繰り返しの作業を自動化し、人件費を削減し、同じ人数でより多くの仕事を回す。確かにAIはその領域で圧倒的な力を発揮します。しかし、私たちAI Nativeが見据えているのは、その先にある"もう一段階上のAI経営"です。

AIを導入して終わりではなく、効率化された業務をどう収益化するか。そして、自動化された仕組みをどう事業として展開していくか。そこにこそ、AI活用の本質的な価値があります。

AI導入の本質は「コスト削減」ではなく「価値拡張」

AI導入が「人を減らす手段」になってしまうと、それは経営における"守りのAI活用"で終わります。しかし、AIによって人の介在が減るということは、時間とリソースが"創造"に使えるようになるということでもあります。

例えば、バックオフィス業務や顧客対応を自動化すると、人的コストは劇的に下がります。その結果、これまで人が関与していたBPO業務(業務代行)を、AIが中心となって回す仕組みが生まれます。つまり、AIが"業務を請け負う側"になっていくのです。

この構造の変化こそ、AI導入の本質的インパクトです。AIによる効率化が進むと、企業は単に「コストを減らす」だけでなく、「AIを使って新たな事業を展開する」ステージへ進めます。AI Nativeでは、まさにその"変換点"を支援しています。

自動化の先に生まれる「自走型の事業モデル」

私たちがクライアントと共にAIを導入する中で、しばしば起こる現象があります。業務を自動化していくうちに、人が一切関与しなくても成立するプロセスが生まれるのです。

例えば、ある企業では、契約書処理から請求書発行までをAIワークフローで完全自動化しました。これまでは月10名体制で回していたオペレーションが、いまではAIと監視1名で運用可能になっています。ここで重要なのは、この「自動化された業務プロセス」はその企業の新しいアセット(資産)になるという点です。

この仕組みを横展開すれば、「自社のオペレーションをそのまま他社に提供する」ことができます。つまり、BPOや新規事業の形で"自動化された仕組みそのものを売る"という発想に変わっていきます。実際、AI Nativeではこのようなケースが増えており、AI導入支援をきっかけに、クライアント自身が新規事業を立ち上げる事例も出てきています。

AI導入から収益化までの実践ロードマップ

では、実際にAI導入から収益化までをどう進めるべきか。AI Nativeでは、4つのフェーズで構造化したロードマップを提供しています。

フェーズ1: 業務の可視化と優先順位付け(2週間)

まず、現状の業務プロセスを徹底的に可視化します。どの業務にどれだけの時間がかかっているか、どこにボトルネックがあるかを定量的に把握することが出発点です。

具体的には、スプレッドシートに以下の項目を記録していきます。

  • 業務プロセス名: 契約書作成、請求書発行、問い合わせ対応など
  • 月間件数: 各業務の発生頻度(例: 契約書作成 月50件)
  • 1件あたりの所要時間: 実測値ベースの作業時間(例: 1件30分)
  • 担当者の時給: 人件費換算のための時給単価
  • 月間コスト: 件数 × 所要時間 × 時給で算出
  • 目標値: 今後の事業成長に伴う件数予測(例: 半年後に月80件)

この可視化により、「月間コストが高く、かつ今後増加が見込まれる業務」が明確になります。その上で、AI化による効果が高く、かつ実現可能性の高い業務から優先順位をつけていきます。人件費×将来の増加予測という2軸で判断することで、投資対効果の高い領域から着手できます。

フェーズ2: パイロット導入と効果検証(1-2ヶ月)

優先度の高い業務から小規模にAIを導入し、実際の効果を測定します。ここで重要なのは、「削減できた工数」だけでなく、「生まれた余剰時間で何ができるようになったか」を記録することです。この段階で、自動化の先にある価値創造の可能性が見えてきます。

フェーズ3: 本格展開と横展開(2-3ヶ月)

効果が実証できたAIソリューションを他部署や類似業務へ展開していきます。この段階で、「自社内で使っているこの仕組みは、他社でも使えるのでは?」という視点が生まれます。これが新規事業の種になります。

AI Nativeでは、経営者に伴走しながら、あらゆる部署に入っていく支援を提供しています。具体的には、各部署の責任者クラスの方々に現在の課題をヒアリングし、優先順位の設計から自動化の実現方法まで、解決策の提案・整理、スケジュール管理、そして実際の開発まで幅広く対応しています。この全社横断的なアプローチにより、部分最適ではなく全体最適を実現し、組織全体の生産性向上と新規事業創出の土台を構築します。

フェーズ4: 収益化と新規事業への展開(3-4ヶ月以降)

自動化されたプロセスを新規事業として展開する段階です。具体的には、BPOサービスとして外部提供したり、自動化ノウハウをコンサルティング・ハンズオン支援として提供したり、あるいはプロダクト化して販売したりと、様々な形態が考えられます。すでに自社で実証済みのため、顧客への説得力が段違いに高くなります。

AI×BPOで変わる「レバレッジ構造」

従来のBPO(業務代行)は、人を増やすことでスケールする"労働集約型"のビジネスモデルでした。当然、受注が増えれば人件費が増え、利益率は逓減していきます。

しかし、AIネイティブ型BPOはまったく逆です。AIによる自動処理を中心に設計するため、受注が増えても人件費はほぼ変わりません。むしろAIワークフローを再利用することで、スケールすればするほど利益率が上がっていきます。

具体的な数値で比較してみましょう。

  • 従来型BPO: 受注100件で10名必要 → 200件で20名必要 → 利益率20-25%で横ばい
  • AIネイティブ型BPO: 受注100件でAI+監視2名 → 200件でもAI+監視2-3名 → 利益率25%→40%に向上

さらに、AI Nativeでは BPOを単なる外注業務とは見ていません。自動化されたオペレーションは、クライアントの事業データと密接に連動し、新たなインサイトを生む"知能化プロセス"と位置づけています。この「AIによる共創型BPO」によって、企業間の関係は"請負"から"共に成長するパートナー"へと変わります。

自動化ノウハウがそのまま「新規事業の種」になる

AIによって効率化された業務は、単に削減されたコストでは終わりません。そこには、他社にも展開できる事業モデルの原型が潜んでいます。

例えば、

  • 採用プロセスを自動化した企業が、「AI採用BPO」としてサービス化
  • コンテンツ生成のワークフローを自動化した企業が、「AIメディア運用SaaS」を構築
  • 問い合わせ対応のAIチャットをカスタマイズし、「業界特化型AIコンシェルジュ」として販売
  • 経理業務の自動化から発展し、「中小企業向けAI経理代行サービス」を立ち上げ
  • 社内ナレッジ管理の仕組みを外販し、「業界特化型AIナレッジベース」として展開

これらはすべて、AI導入支援の延長線上にあります。つまり、AIで効率化した結果がそのまま新しい収益源になるという構造です。

AI Nativeではこの「業務 → 仕組み → 事業」という流れを"AIネイティブ経営"と呼び、単なる導入支援にとどまらず、事業設計・BPO展開・クロスセル戦略まで一気通貫で支援しています。

経営者が注目すべきは「AIでどう利益が生まれるか」

多くの経営者にとって、AI導入のROI(投資対効果)は最大の関心事です。そして、その答えは「何人分の作業が削減できるか」ではなく、「AIによって新たな収益構造が生まれるか」にあります。

AIで業務が自動化されるほど、ビジネスモデルの"柔軟性"は高まります。たとえば、

  • 自動化した社内フローを外部提供してBPO化
  • データを活用して新しいマーケットを開拓
  • 自動化の知見を元にSaaSを構築

このように、AIは単なる効率化ツールではなく、「ビジネスそのものを再設計するレイヤー」へと進化しています。

AI Nativeでは、クライアント企業とともに業務の自動化を起点に、売上を生む仕組みへと変換する支援を行っています。それは、AIを導入することではなく、AIを組み込んだ経営構造を再定義することです。

成功企業に共通する3つの特徴

AI導入から収益化まで到達できる企業には、共通する特徴があります。

1. 「効率化=目的」ではなく「効率化=手段」と捉えている

成功している企業は、AI導入を「コスト削減」で終わらせません。効率化で生まれた余剰リソースを「何に使うか」まで設計してからAI導入を始めます。結果として、自動化された業務が新たな収益機会に変わっていきます。

2. 小さく始めて、速く検証する

最初から完璧を目指さず、まずは1つの業務でAIの効果を実証します。そして、その成果を社内で共有し、横展開していく。このスピード感が、AI活用を「実験」で終わらせない鍵になります。

3. 外部の専門家を適切に活用する

AI技術は日進月歩です。すべてを自社でキャッチアップしようとすると、導入が遅れ、競争力を失います。成功企業は、自社のコア業務に集中し、AI実装やワークフロー設計は専門家に任せることで、スピードと品質を両立させています。

AIで「利益を生む自動化」へ

AI活用の目的が「人を減らす」ことだけなら、企業の成長は止まります。しかし、AIによって"人がいなくても価値を生み出せる構造"を作ることができれば、その企業は、少人数でも高収益な「筋肉質な経営体」に進化できます。

AI Nativeが目指しているのは、まさにその未来です。業務効率化を通じて、クライアントの事業構造を"自動で利益を生む仕組み"へと変える。そしてその先に、AIを中心に据えた新しい産業エコシステムが生まれると、私たちは確信しています。

最後に

AIは「人を置き換える」技術ではありません。人の手を離れても、価値を生み出し続ける仕組みを作るための技術です。

AI Nativeは、業務効率化のその先へ——AIを活用して「売上を生む自動化」を共に実現するパートナーであり続けたいと考えています。

「AI導入を"業務改善"で終わらせない。経営構造の変革へ。」

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執筆者

田中 慎

田中 慎

CEO / PM / Vibe Coder

2011年新卒で受託開発/自社メディア企業にWebデザイナーとして入社。1年半ほど受託案件のディレクション/デザイン/開発に従事。2012年株式会社サイバーエージェントに転職し、約4年間エンジニアとしてポイントプラットフォーム事業、2つのコミュニティ事業の立ち上げ・運用に従事。同時に個人事業主としてWebサービス/メディアの開発をスタートし、年間3,000万円以上の利益を創出。2017年株式会社overflowを共同創業者・代表取締役CPOとして設立。2つのHR SaaS事業をゼロから立ち上げ、累計1,000社以上の企業、エンジニア/PMなど3万人以上が利用するサービスへと成長させた。現在はAI Nativeの創業者として、AIと人間の共創による新しい価値創造を推進。